こけしの裏面・署名について語りたい!!

はじめに

こけしの裏面には高確率で工人さんの署名が描かれています。
こけしは工人さんによって一人ひとり異なった個性を楽しめますが、実は裏面も個性的なんです!!

ここでは、こけしの裏面の世界を紹介します。

こけしの裏面のフォント

丁寧な楷書体

例:高田稔雄工人

こちらは旧式の轆轤を使っていた時の弥治郎こけしを想像で再現したこけし。
丁寧に書かれていて、誰が作ったのかが一目でわかります。
作者の名前を憶えやすいというメリットがあります。

さらさらと書かれた草書体

例:平賀輝幸工人

古風な作並こけしですが、台座が付いているから地震の心配は少なそうです。
これを草書体と呼ぶかどうかは微妙なラインですが。
一応、「作並 輝幸」と書いてあります。 
正確な描彩に定評のある工人さんですが、裏面はさらさらと書かれていて、器用さがよく伝わります。

サイン風

例:沼倉孝彦工人

グラフィックデザイナーとしてのお仕事も兼任されている工人さんの、センスが光る一品。
デザイナーらしく、芸能人のサインみたいでおしゃれです。
名前とは別に、最初から制作年も書かれていました。

崩し文字

例:松田大弘工人

この工人さんの伝統型の解釈力には毎回驚かされます。
もはや草書体では済まないほどです。
ここまでくると誰が作ったのか読めないですね。
しかし、芸術家のサインみたいでカッコイイです。

書記と現在で署名のフォントが変わったもの

例:髙橋一成工人

左はデビュー直後(2019年6月)の作品、右は2024年現在の作品。
初期は太く筆を入れていましたが、現在は比べ物にならないほど細く繊細に署名していることがわかります。
年代による作風の変化を楽しむのもこけしの醍醐味です。

名前以外の情報

制作年月入り

例:野地三起子工人

優等生のような土湯のこけし。
いつ作ったのかわかりやすいです。
きっとこの工人さんは丁寧で律儀な人柄なんだなぁと感じ取れます。

年齢入り

例:太田孝淳工人

この方の作るこけしは目がキラキラ輝いていて大好きです。
こちらもいつ頃作られたのがわかりやすい一品です。
しかし制作時御年82歳!!ご高齢なのに制作意欲が高いのは驚きです!!

これからもお元気で!!

木材の種類

例:煤孫盛造工人

描彩のない南部系ゆえに、木材にとことんこだわることに定評のある工人さんの作品。
北東北ではメジャーなイタヤカエデで作られています。
木目の美しさが伝わってきます。

地名入り

例:大沼秀顯工人

この工人さんが作るこけしのとろけるような表情が大好きです。
地名が付いていると、その場所に行った記念にもなります。
鳴子温泉に来たときは必ず大沼秀顯工人のお店に寄ります。
…が、お会いするのは大体イベントの時なので、お店で会えたことは一度もありません…

型番入り

例:五十嵐嘉行工人

こちらはむぐっと黙り込んでいるような印象の間宮明太郎型のこけし。
ご本人のサインは現代人になじみのない草書体ですが、型番は比較的読みやすい印象です。

地名・型番どちらも入った欲張りセット

例:阿保正文工人

こちらははつらつとした好印象の伊太郎型。
温湯は青森県黒石市の温泉地です。
津軽の工人さんは文字が荒ぶっている方が多い気がします。

こけしの背面

こけしの背面に署名があるパターン

例:小野寺正徳工人

私の人生を狂わせた、真面目な印象のこけしちゃん。
秋田や山形のあつみ温泉、仙台の秋保温泉のこけしは、裏面ではなく背面に署名が描かれる傾向があります。

裏面に署名、背面に型番

例:小林孝太郎工人

裏面に署名が描かれているのに、なぜか背面に型番が描かれているというレアケース!!
こちらは厳しくもどこか包容力のある、吉太郎型の一品です。

その他情報

謎の審査シールが貼られているこけし

例:新山吉紀工人

こちらは妖しい表情と、りんご飴を思わせるフォルムの一品。
工人さん曰く「なんかの品評会に出した」とのことで、その時に張られた審査品シールが貼られています。

謎の数字

例:奥瀬鉄則工人

没後30年以上たっても人気が高い工人さん。
それもこのトロンとした表情を見れば誰もがくぎ付けになるはず。
署名とは別に「781」と謎の数字が書いてあります。
ビンテージこけしゆえ、前の持ち主が持っていた本数なのだろうかと推測しました。

前の持ち主の入手情報

例:大沼秀雄工人

大沼君子工人宅で800円で入手とのこと。

律儀に入手年月日まで鉛筆で書いてあります。
今と昔では物価が違うとはいえ、こんなに安くて工人さんの生活が成り立つのか心配になってきます。

大沼君子工人は質素な生活ぶりだったものの、大好きなこけしや野草に囲まれて、客人にはお茶を出しておもてなしをする素敵な方だったとお伺いしています。
作品はKOKESHI Wikiで確認しましたが、大好きな野草をモチーフにしたこけしを作っていたそうで、そのこけしに思わずときめいてしまいました。
10年以上前にお亡くなりになった工人なので、生まれてくる時代が違かったら、ぜひお会いしてみたいと思った工人さんです。

話がそれた

まとめ

こけしの見るべきところは当然表情や胴体の模様ですが、たまにはこけしの裏面ものぞいてみると、新たな発見があるはずです。

かといって、工人さんのネームバリューだけでこけしを選ぶのはあまりよろしくないと思うがな!!

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